【医師監修】失敗しないベッドの選び方

 

70%の人がマットレスの選び方が分からない

ZINUSでは3月15日の「世界睡眠デー」に向け全国の20代~60代の男女600名を対象に現在使用しているベッドマットレスに関する調査を実施しました。

調査の結果70%の人が「自分の身体に合ったマットレスの選び方がわからない」と回答、また、28%の人が「現在使用しているベッドは身体に合っていない」と回答しました。多くの方がベッドマットレスの選び方を知らず、また、実に3割弱の方が、自分の身体に合っていないマットレスを購入してしまっています。

ベッドマットレスの選択肢は無数にありますが、なんとなくの感覚で選んでしまうと、結果、寝心地が悪かったり、疲労がむしろ増してしまったりするリスクもあります。しかし、身体に合ったベッドマットレスを選ぶことができれば、体の痛みや違和感が軽減したり、朝から活動的に動けることにもつながる可能性も。

自分の体型や環境に合ったマットレスの適切な選び方、ベッドの種類について医師とベッドマットのプロフェッショナルの観点から解説します。

【監修】

整形外科医 富和清訓先生

社会医療法人田北会 田北病院整形外科。

岩手医科大学医学部医学科卒。医学博士、日本整形外科学会専門医、日本DMAT医師、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、産業医。特に自転車競技に精通しており、レースドクターとして従事し国際自転車競技連合のエリートナショナルコミセールも取得している。バイシクル・シティ(ライジング出版)編集委員。

上級睡眠健康指導士 高野綾太さん

マットレス」と「睡眠」の専門家。1年で50個以上のマットレスを購入・体験している。睡眠の質やQOLの観点から多くの人の寝具・マットレス選びを手助けする。

快眠ハック:https://gsleep-hack.site/

 

日本人の睡眠時間は2021年の調査では男性7.58、女性7.49(令和3年社会生活基本調査 総務省統計局)となっています。大まかに24時間のうち約3分の1を睡眠時間にあてがっているようです。また、これが適切な長さなのかというと、英国の大規模調査では7~9時間が最も脳に対するMRI画像検査にて大脳皮質の状況が良好であったという報告もされています。同様に、110万人を6年間追跡した結果、約7時間にて死亡リスクが最も低かったという報告もあります。※1 ※1 Kripke DF, et al. Arch Gen Psychiatry. 2002;59:131-6.

概ね7時間程度の睡眠時間を確保しておけばよいということですが、個人差もあるのであくまでも目安です。

 

1日の3割程度の時間!つまり人生の3割をベッドで過ごすことを考えると、その時間により高いクオリティを求めたくなるのは当然ともいえます。睡眠中の姿勢は、約半分が、仰臥位(ぎょうがい。仰向けに横たわっている体位)であるといわれます。また、1回の睡眠で50回程度の寝返りを打つといわれています。

 

寝具は主に「敷き寝具」「枕」「掛け寝具」に分類され、このうちマットレスは「敷き寝具」にあたります。「敷き寝具」の役割は、“寝姿勢を適正に保ち,体圧を分散すること”とされます。寝具の理想のコンディションは・寝返りしやすい ・自然な寝姿勢が保てる ・入眠時の寝姿勢で心地良い ・心理的な安心感が得られる

という条件をかなえることが理想だといわれています。

 

マットレスを選ぶ際には、寝返りのしやすさ、仰臥位(仰向けの姿勢)での寝心地、入眠姿勢での寝心地の3つのポイントについて目覚めた時に実際に確認し、選定することで、より良好な睡眠を確保できます。実際にマットレスで眠ってみて、覚醒時にこの3点に関して振り返ることが理想的な選び方なので、各メーカーが展開しているお試しレンタルサービスなどを活用することを推奨します。

 

ベッドマットの幅、硬さ、弾力性の違いが原因となる睡眠の質への影響は決して小さくありません。

“適当な硬さがあるベッドがいい”などと言われるのを聞いたこともあると思いますが、中程度の硬さで腰痛が改善したという報告もあるため、真偽はつけがたく、体形、寝相との組み合わせによってもフィットするベッドマットは変わってきます。

ベッドの幅に関しては、寝返りが楽にできる広さはあったほうが良く、可能であればより広いものを選ぶのがおすすめです。寝返り動作(以下寝返り)というのは睡眠時において非常に大切な動作だからです。寝返りをしなければ、「床擦れ」(じょくそう)が発生します。数時間寝返りを行わなければ、褥瘡が発生するため、医療現場では自力で体位変換が難しい方にはスタッフが2~4時間おきに体位変換を行ってます。また、姿勢を変えることで筋肉の緊張を分散させ、布団の中の湿度・温度の調節にも繋がります。つまり寝返りがしにくいと、局所の筋肉の緊張が強くなり肩こりや腰痛を悪化させたり、発汗調節が難しくなることが想定されます。

ベッドマットレスの素材の種類

マットレスの素材の主な種類と、そのマットレスに向いている人のタイプを紹介します。

 

・低反発ウレタン

反発弾性率が15%未満のウレタン。密度によって廉価なものから高価なものまで幅広く存在します。ふんわりと柔らかく、体を包み込む感触が大きな特徴。じんわり体にフィットし、リラックス感をもたらします。寝心地は気持ちが良いですが、低反発ウレタンのみのマットレスはサポート力が弱く、寝返りをしにくいのがデメリット。体が沈みすぎるために、蒸れやすく、マットが潰れてしまいやすいため注意しましょう。

〈こんな人にオススメ〉

・体重45㎏以下の人 ・横向きに寝がちな人

 硬い素材だと体が痛くなってしまう『華奢な人』や『子ども』におすすめです。また、横向きで寝ることの多い人にも向いています。横向きで寝ると、肩や腰まわりのカーブが仰向けの時よりも大きくなり、低反発ウレタンのほうが体にフィットしやすいです。

 

・ウレタン(一般)

反発弾性率が15〜49%の、低反発でも高反発でもないウレタンを指します。柔らかいものから硬いものまで幅広く、自分に合った硬さを見つけやすいでしょう。反発力は低反発ウレタンと高反発ウレタンの間のため、フィット性がそれほど高くなければ、寝返りのしやすいものもあるでしょう。

〈こんな人にオススメ〉

・低反発では柔らかすぎる ・高反発では硬すぎる

 低反発ウレタンだと柔らかすぎて、高反発ウレタンだと反発力がありすぎだと感じる人におすすめです。

 

・高反発ウレタン(高弾性)

反発弾性率が50%以上のウレタン。高価なマットレスや高級コイルマットレスの詰め物に使用されることが多い素材です。サポート力があり寝返りしやすいのが大きな特徴で、腰痛対策のマットレスとして活用されています。耐久性に関しては、コイルマットレスには劣りますがウレタンの中では最も高いといえます。

ちなみに、一部の格安マットレスでは、ただ硬いだけのウレタンを『高反発』と記載するケースもあるので注意を。目安として、3万円以上のマットレスを選ぶと本当の高反発を使用している可能性が高くなります。

〈こんな人にオススメ〉

・長期間使用したい ・硬めの寝心地が好み

高反発ウレタンは寝返りをサポートしてくれるため多くの人に向いている素材といえます。やや硬めの寝心地のものが多く、日本人には好む人が多いともいえます。

ただ、50kg以下の痩せ型の方、体のカーブが強い女性などには硬すぎる可能性もあります。

 

・ボンネルコイル

コイルスプリングを連結させて1つにまとめたマットレス。連結したコイルが、体を「面」で支えるため硬めの寝心地です。体を支える力が強く、寝返りしやすいのが特徴。また、コイル層の通気性が良いのもメリットです。ただし、コイルがすべて繋がっているため一か所への重みの負担で他の部分も沈んでしまう、体圧分散性の低さはデメリット。体の重い部分に集中的に負担がかかったり、隣の人の振動を感じやすい素材です。

〈こんな人にオススメ〉

・コスト重視 ・かなり硬めが好き ・がっちり体型 ・1人で寝る

 

・ポケットコイル

コイルを一つずつ不織布の小さな袋に入れて、マットレス全体に敷き詰めたマットレスです。コイル一つひとつが独立して動くため、体を「点」で支えます。コイル一つひとつが独立して動くため、体の細かな曲面にもフィットしやすいのが最大のメリット。体圧分散性に優れているため、正しい寝姿勢を保ちやすくなります。

振動も伝わりにくいので隣の人の動きで目が覚めにくいというメリットもあります。マットレスに圧がかかっても、それ以外のコイルには影響が少ないのです。さらに、ばねの反発力で寝返りを打ちやすいというメリットも。

ボンネルコイルよりも通気性はわずかに劣りますが、ウレタンマットレスよりは通気性が良く、大きなデメリットのない素材です。

〈こんな人にオススメ〉 

・長期使用したい ・衛生面重視 ・2人以上で寝る

寝心地・寝返りのしやすさ・耐久性・衛生面においてバランスの良いマットレス。隣に寝る人の振動も伝わりにくいので2人以上で寝る場合にもおすすめです。

 

・ハイブリッド

異なる素材を組み合わせることにより、それぞれのメリットを"いいとこ取り"をしている複数構造のマットレス。ふんわり感と寝返りの打ちやすさを両立しつつ、低反発のデメリットである通気性と反発力をポケットコイルが補うため、全体でみるとデメリットが非常に少ないです。異なる素材のメリットを最大限に活かしており、例えば「低反発ウレタン」×「ポケットコイル」の組み合わせであるZINUS『Prime Support』であれば、低反発による寝心地とフィット性・ポケットコイルによる反発力・通気性・耐久性をバランス良くかなえています。

〈こんな人にオススメ〉

・上質な睡眠を取りたい  ・様々な寝方をする ・性能のバランス重視

ハイブリッドマットレスの組み合わせは『ポケットコイル×高反発ウレタン×低反発ウレタン』が寝心地や寝姿勢・通気性などが良くておすすめですが、価格も様々なので、予算に合わせてハイブリッドマットレスを探しましょう。

 

・ラテックス

ゴムの木から採取された樹液を原材料にした、ゴム特有の柔らかさと弾力性を兼ね備えたマットレス。天然ラテックスと合成ラテックスの2種類が存在します。

ゴム特有の柔らかさ、弾力性で体圧分散性に優れており、寝返りしやすい素材です。

天然ラテックスの場合、自然抗菌作用がありダニやカビが発生しにくいのも特長。また、ヘタりにくいのもメリット。ただし、「重い」「臭いが気になる」「ラテックスアレルギーの方には不向き」「高価なものが多い」というデメリットも。

〈こんな人にオススメ〉

・柔らかい寝心地が好き ・長く使いたい ・衛生面重視

柔らかいながらも反発力があるため、体重が軽い方にも向いています。天然ラテックスのほうが上質な素材といわれます。ただし、皮膚と天然ゴム中のラテックスタンパク質との接触により、赤み、かゆみ、じんましんなどの皮膚障害が発現するラテックスアレルギー体質の方は誤って使用しないよう充分注意する必要があります。またお子様への御使用はうつ伏せから仰向けになる動作能力に個人差が大きいため、特に乳幼児には御使用なさらないでください。

 

・ファイバー

ポリエチレンやポリエステルなどの樹脂を固めた素材。ファイバーマットレスは立体構造で空間が多いため、圧倒的な通気性を備えています。蒸れにくくカビが生えにくい素材で、床の直置きで使用しても安心です。また、反発力にも長けており寝返りに必要な力が少ないのもメリット。

ただし、寝心地が硬すぎると感じることも多く、値段も高く、賛否が分かれる素材ともいえます。高熱に弱いため、布団乾燥機を使う方は注意が必要です。

 

〈こんな人にオススメ〉

・直置きで使いたい ・汗っかき ・がっちり体型

通気性はピカイチですので衛生的に使い続けられます。硬い寝心地は薄いマットレストッパーをのせることで改善するのがおすすめです。効率よく放湿してくれるため、夜中に暑さで目覚めてしまうという方には最適です。

 

マットレス選びのポイント

マットレスを選ぶポイントにおいて重要なのは以下2点です。

①    体重に合った硬さ(体圧分散性)

②    寝返りを打ちやすい反発力(反発弾性)

①   体(体重)に合った硬さ(体圧分散性)

マットレスを選ぶ際に最も重要なのが硬さ(体圧分散性)です。自分の体に合った硬さのマットレスを使用すると、全身で均一に体重を支えて自然な寝姿勢になります。それによって、腰痛や疲労感の軽減に繋がります。

 

硬すぎるマットレスだと腰が浮いてしまい、腰が触れない分、お尻や背中などに集中して体圧がかかることになり、お尻や背中の血行不良や筋肉疲労につながります。さらに腰が浮いてしまい、不自然な寝姿勢になってしまうのです。これだと安眠を期待できないだけでなく、褥瘡のような皮膚障害に繋がる可能性があります。

↑ 極端に硬いマットレスなので、頚部、背部腰が浮いている。

逆に、柔らかすぎるマットレスは体圧がかかりやすいお尻が沈みすぎ、腰を曲げたような寝姿勢になってしまいます。また、体が沈みすぎると血流を促進して体温を調整するためにしている寝返りが打ちにくくなり、不快感を覚えやすくなるなどのマイナス面もあります。また全身、特に腰背部に負担が生じます。ふんわりと柔らかいマットレスは、横になった瞬間は満足感を感じやすいですが、最初の寝心地だけで決めてしまうと健康被害につながるおそれがあります。

また、体重と硬さ・柔らかさの好みだけで選んでしまいがちですが、寝相、反り腰の有無などでも、フィットするマットレスは変わります。

①    体重に合った硬さ(体圧分散性)

マットレスの選び方(ウレタンマットレス編)

 硬さをあらわす「ニュートン値」

ウレタンフォームマットレスの硬さは明確に基準が決まっているため、自分の体に合ったマットレスを比較的に決めやすくなっています。マットレスに表記されている「ニュートン」とは、マットレスの硬さや反発力をあらわす単位で、日本産業規格(JIS)で規定している硬さの試験によって測定されたものです。 ニュートンの値は、消費者庁によって『やわらかめ』『ふつう』『かため』の3区分に分けられています。

オンラインで購入する場合は、商品概要欄をチェックしてみましょう。

体重別のおすすめの硬さ

ウレタンマットレスの硬さは40N〜200N以上と幅広いですが、体重別におすすめのニュートン値は表の通りです。

体形や寝相によっても理想の硬さは異なる

 例えば50kg以上の人でも、反り腰があるような、体の反り返りがある人には「やわらかめ」がおすすめです。フィット性が高くないと、反った腰が浮いてしまい身体に負担がかかるからです。

さらに、横向きで眠ることが多い人も、肩への負担を減らすために、柔らかくてフィット性の高いマットレスがおすすめです。

マットレスの選び方(コイルマットレス編)

「線径」と「詰め物」で硬さが決まる

コイルの「線径」とは

コイルの太さを線径といい、太いほど硬いマットレスとなります。線径1.7mm以下であれば『柔らかめ』、1.9mm程度であれば『ふつう』、2.1mm以上であれば『硬め』の寝心地です。

また、コイルの巻き数が多いとやわらかく、少ないと硬めの寝心地になります。並べ方には「並行配列」と「交互配列」の2種類がありますが、交互配列の方がやや硬めになります。

クッション層の「詰め物」の違い

コイルマットレスはコイル層とクッション層に分かれており、クッション層の中身を「詰め物」といいます。

コイルマットレスには、カバーとコイルの間に詰め物が入っており、それによって体圧分散性が高まり、マットレスの硬さや反発力を調整しています。詰め物に使われる主な素材はウレタンフォームであるため、前述したN(ニュートン)値を目安に硬さを選ぶと、マットレス全体の寝心地がイメージしやすくなります。

この詰め物は、薄すぎても分厚すぎても良くありません。薄すぎる場合、ばねの感触が出てきて寝心地が良くありません。反対に分厚すぎる場合は、コイルの恩恵を受けにくくウレタンマットレスに近い寝心地になってしまいます。詰め物の厚みは5〜8cm程度が、ばね感の軽減、熱のこもりにくさを両立してくれておすすめです。

②寝返りを打ちやすい反発力(反発弾性)

硬さ(体圧分散性)とは異なり、跳ね返りの具合のことを反発力(反発弾性)といいます。反発力を示す「反発弾性率」によって『低反発』『高反発』が区別されます。反発弾性率は、ある決まった条件で銅球を落とし、バウンドした後に高さ何%まで上がってきたかで測定します。反発力が高ければ高いほど、寝返りや起き上がるときのサポート力があり快適な睡眠を得られやすくなるのです。 

寝返りのしやすさという面では低反発よりも高反発マットレスの方が寝返りを打ちやすいと感じる傾向にあります。“硬さ”と異なる“跳ね返り具合”も大切であることを覚えておきましょう。 

『硬さ』と『反発力』の認識の違いは表を参考にしてください。反発弾性率はほとんどのメーカーで記載されていないため、気になる方は問い合わせてみましょう。

「硬さ」と「反発力」これらのポイントと注意点をおさえて、新生活に向けて理想のマットレスを探してみましょう。寝具の中で最も身体の広範囲を支えるマットレスについてまずは、寝返りが楽にできるか?違和感なく可能か?いろんな材質の寝具を是非実際に体験体感してみてください。

 

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オープン時間: 11:00~20:00